北ア(穂高) 割谷山(2224m)、槍見台(2250m)、丸山(2452m)、西穂独標(2701m)、西穂高岳(2909m)、赤岩岳(2870m)、間ノ岳(2907m)、天狗ノ頭(2909m)、ジャンダルム(3163m)、ロバの耳 (3150m) 2010年10月1-2日

所要時間
10/1
9:06 西穂高口−−9:15 登山届出所−−10:12 西穂山荘 10:47−−10:54 上高地分岐−−11:34 槍見台−−12:15 斜面に取り付く−−12:19 割谷山 12:51−−13:24 槍見台−−14:14 上高地分岐−−14:24 西穂山荘−−14:38 丸山 15:21−−15:32 西穂山荘(幕営)

10/2
5:34 西穂山荘−−5:49 丸山−−6:23 西穂独標−−6:39 ピラミッドピーク−−7:09 西穂高岳 7:35−−7:55 赤岩岳−− 8:11 間ノ岳−−8:31天狗ノ頭 8:40−−8:52 天狗のコル−−9:35 ジャンダルム 9:39−−9:49 ロバの耳 9:54−−9:59 ジャンダルムを巻き終わる 10:03−−10:35 天狗のコル−−10:48 天狗ノ頭 11:00−−11:21 間ノ岳 11:26−−11:41 赤岩岳−−12:00 西穂高岳 12:09−−12:33 ピラミッドピーク−−12:44 西穂独標−−13:13 丸山−−13:23 西穂山荘 13:56−−14:44 西穂高口

地図クリックで等倍表示



概要
 ロープウェイ西穂高口駅から西穂山荘に至り、初日は割谷山を往復して幕営。翌日にテントを残置して軽装でロバの耳を往復し、ロープウェイで下山。

 割谷山は登山道が西側を巻いているので藪を漕いで山頂へ。山頂北西側が登山道の最高点及び山頂までの最短距離で、樹林が茂っているので笹が薄い個所があり、樹林が続く間は楽に登れる。笹藪区間になってからは結構濃く、手でかき分けつつ足元の笹に足を滑らせながら登ることになるが2分程度。山頂は膝丈の低い笹で展望良好な気持ちの良い場所。槍見台はなだらかなピークで標識は無く地形図を見ながら歩かないと通過してしまいそうな山。東半分の展望が良い。

 西穂山荘から西穂独標までの間は特に危険個所は無く、老若男女、一般ハイカーもたくさん登っている。独標から先では独標の北側下りが一番ルートが分かりにくく怖いが、冷静に観察すれば分かるだろう。逆方向から来た場合は問題なし。要注意個所として鎖場もあるがトラバースの補助用であり使う必要は無い。

 西穂から先は限られた人しか入らないが(といいつつ結構な数が入っているようだが)、実際に歩いてみると(ロバの耳までだが)岩登りの高度な技術は不要で、3点確保の基本さえしっかりしていれば問題なし。ルートには白い丸ペイントがなされており、それを確認しつつ進んでいけばルートを外すことは無い。冬ルートもあるので正規ルート以外に踏跡があるが、浮石が多いので入らない方がいい。数か所の鎖場があるが、天狗のコルの天狗側の鎖以外は、登りなら鎖を使わなくても通過可能(技術があれば下りでも鎖は不要)。天狗のコルの天狗側の鎖場は2段に分かれており、コルから上がる方向で最初の鎖はややハングオーバー気味で大丈夫かと思わせるが、実際はスタンスが豊富なので鎖の助けを借りれば苦労しないで突破できる。ここはいかにいい場所に足を置くかで必要とする腕力に差が出そう。その先はジャンダルムのトラバースが少々怖い他は、あまりヤバいところは無かった。馬ノ背は通過していないので危険度のほどは不明。全体的には私のような普段は岩とは縁のない山登りをやっている人間でも「緊張する」というより「楽しめる」ルートだった。


 西穂は私が登り残した2000m峰が大量に残っている唯一のエリアだ。今まで行かなかった理由は上高地が混雑するのが嫌なこともあったが、最大の要因は岩登りの技術力だった。私の場合、藪はやっても沢や岩はやらないので岩登りのレベルは初心者と変わりは無く、いくら山の経験が長いとはいえ「国内最強」の登山道と言われる西穂を無事に歩けるのか大いに不安があった。私の昔の仲間で同様に岩に不慣れな人が歩いているので行ってみれば行けてしまうかもしれないのだが、垂直の鎖場があったりして幕営装備を担いで縦走できるのかはかなり怪しい。DJFのように強硬日帰りできればいいのだが、そこまでの体力は自信が無い。そんなわけで気になりながらも長期間宙ぶらりんになっていた。

 しかしこのままでは明神岳や劒岳北方稜線、北鎌独標や硫黄尾根などいつになっても登れるわけがない。残った2000m峰の中では西穂稜線は間違いなく最もレベルが低いはずで、今シーズンの無雪期も残り僅かになったがやってみることにした。幸い、10月1日(金)は会社の創立記念日であり、混雑する週末を避けて入山が可能で、ロープウェイの待ち行列や狭い西穂山荘のテント場を心配しなくて済む。当初の天気予報では週末は雨マークだったが徐々にいい方向にずれていき、直前には日曜は崩れるが土曜までは晴れの予報となった。

  1.  問題はコース取りと日程だ。撤退覚悟で縦走に挑戦してもいいが、安全面を考慮するとできるだけリスクを減らした状態で挑戦するのが望ましい。重い荷物での鎖場通過が最大の難関と思えたので、テントを担がずに入りたいところだ。それなら小屋泊まりという手段があるがコスト面を考えると躊躇してしまう。ここは幕営として、小屋にテントを張ったまま軽装で往復するのが得策か。この場合、稜線上を途中で戻ることになるので、西穂山荘から奥穂間の全ピークを踏むのは不可能と思われるが、今回は西穂の入門編ということにしてもう1度登ってもいいだろう。前穂が未踏なことを考えると岳沢からの周遊を考えて天狗のコルから奥穂側は残しても問題なかろう。でも天狗ノ頭から西側は一掃しておきたい。となると西穂山荘起点で天狗ノ頭を往復となる。

 初日は小屋に入ったら焼岳方面の槍見台が未踏なのでまずそこを踏み、ついでにその先の割谷山も登ろう。ここは既に登っているが、その時は天候が悪くてガスっており、笹もびしょ濡れで酷い目に遭いながら稜線までは出たのだが、最高点だったかどうかは入念に確認していなかったのだ。少なくとも三角点は目にしていない。今回はGPSを使って確実に山頂に到達しようと思う。まあ2回目の登山になるかもしれないが、槍見台に登ってからでは時間的に天狗ノ頭往復は無理で時間が余るのでちょうどいい。

 この時期の平日のロープウェイ始発時刻は8:30なのでのんびり寝坊できる。平日移動で高速の土日\1000は使えないので素直に通勤割引+αで我慢し、沢渡を通過し安房トンネルを抜けて新穂高へ。後で知ったが鍋平に無料駐車場があるとのことだったが、この時はそれを知らずに旧村営無料駐車場の最奥区画に車を入れた。木曜深夜なのに最奥区画の空きは数台程度だった。手前はガラガラだったが。天候は東京は雨だったがこちらは星が見えていた。

旧村営駐車場 新穂高温泉から見た笠ヶ岳
新穂高温泉から見た穴毛槍 ロープウェイ新穂高口駅

 翌日、のんびり起きて朝飯を食って8時過ぎに出発、ロープウェイ駅には定刻15分前くらいに到着したが、平日なので待ち行列は見えない。往復チケットを購入して改札口に行くと100人程度?が並んでいたが驚くほどの人数ではない。最初のロープウェイは3番目に搭乗、この人数だとロープウェイは連続運転で、下のロープウェイは5分間隔程度だった。

鍋平高原駅 しらかば平駅へ移動
しらかば平駅 西穂高口駅

 鍋平に到着して次の白樺平ロープウェイ駅へ。ここは始発便に搭乗、一気に高度を上げる。背後には笠ヶ岳がすっきり、その左手奥には白山も見えていた。今日は好天だ。西穂高口駅に到着し、登山口の案内を頼りに4階に登り、一番奥の出入口から外に出る。出口右手に三角点があり、その横に水道があってここが最終水場だった。私は車で2リットルの水+1リットルの飲料を担いでいるので補給は不要だ、というか水を入れる容器がもうない。不足すれば西穂山荘で購入すればいい。

最初は遊歩道を行く 樹林の隙間から見た西穂の稜線
登山届出所 シラビソ樹林が続く

 遊歩道の広い道を緩やかに下っていくと建物が登場、ここで登山届けを出す。西穂より奥に突入するのだからやっぱ書いた方がいいだろう。ロープウェイ駅の標高は既に2100mを越えており、最初からずっと深いシラビソ樹林を進んでいく。少し下ってからは登りが続き、水と飲料の合計3kgの重さがずっしりと肩に食い込む。それでも稼ぐ標高差は300mに満たないので大したことではない。

登りが始まる 西穂山荘が見えてきた
西穂山荘 テント場。あまり広くない

 樹林を登っていくと思ったより早く西穂山荘の小屋が出現、あっけない到着だった。これだったら足が早い人なら当日出発で西穂稜線を越えて穂高山荘まで到達できるかもしれない。まだまだ午前の早い時間だが早速幕営手続き。\500を支払い水のお値段は\200/リットルと聞き、駅から担いできて良かったと思った。北アはこれが水の通常価格なのだろうか。最近は夏場にわざわざ水を購入する必要がある小屋で幕営することはほとんどなかったからなぁ。北アで最後に水を購入したのはいつどこだったのか全く覚えていない。なお、平日にもかかわらず西穂山荘はたくさんの登山者で大賑わいだった。こりゃ夏山シーズンの週末となったらどうなるのだろう?

 まだテントは皆無でどこでも張り放題、しかも平日なので満杯になる心配はないが、いつものクセで端のほうの小さなテント適地にしておいた。受付でもらったパウチされた番号札をテントにぶら下げ、水、食料、それに藪漕ぎを考慮してゴアを突っ込んだアタックザックを背負って割谷山へと向かう。

木の高い位置に標識がある 上高地−焼岳分岐

 ここも深いシラビソ樹林が続き、最初は上高地方面と焼岳方面の看板が重なっている。両方の看板とも木の高い位置に付けられており、積雪期でも埋もれない配慮であろう。そうそう、ロープウェイ駅から西穂山荘までも木の高い位置にカラフルな標識を見た。ロープウェイも山荘も通年営業だそうだから、真冬でもそれなりの入山者がいるようだ。

シラビソ樹林を下る 尾根が明瞭になると樹林が開ける
六百山と霞沢岳

 上高地分岐を通過してなおもどんどん標高を下げ、傾斜が緩むとかなり湿った道が続く。まあこれだけシラビソ樹林が続いていれば保水力もかなりのものだろう。時々「路肩」に上がったりして沼地を迂回する。最低鞍部を通過して登りにかかると尾根らしくなり、積雪期に雪庇ができるのだろうか、尾根東直下の樹林が切れて眼下の上高地が見通せるようになった。最初に目が行くのはやはり六百山で、ここから見てもよくもまああんなところを登ったと思えるほどの急傾斜だ。でも現場に行くとそうでもないんだよなぁ。霞沢岳に続くゴツゴツとした尾根もよく見える。あそこを歩くことはもうないだろうな。

槍見台山頂 槍見台から見た大正池
槍見台から見た穂高
槍見台から見た前穂〜明神岳(クリックで拡大)
槍見台から見た六百山〜霞沢岳(クリックで拡大)

 尾根を登りきると南北に長く緩やかなピークに到着。ピークが槍見台のはずだが標識等は皆無だった。GPSの電源を入れて現在位置を確認すると間違いなく槍見台だった。まさかこんな目立たないピークだとは思わなかった。これでは地図を見ないで歩いていたら絶対に気付かず通過してしまうだろう。せっかくなので目立ちにくいが近くの立ち木に赤テープを付けておいた。

鞍部付近
峠に出て2200m峰を見る 峠から見た割谷山

 割谷山との鞍部に向かって急激に高度を下げ、傾斜が緩むと2重山稜の真中の谷(登山道から見ると左手)に池が見えた。地形図に出ている池らしい。さらに下って最低鞍部を通過、割谷山への登りにかかる。山頂への取り付きは登山道が稜線を越えて西側斜面に乗り移る付近の予定なので、峠状の場所までは地形を気にせずどんどん登る。やがて傾斜が緩んで水平移動に変わると右手に僅かに高まりが見えた。これは山頂北側の2200m峰で、尾根上より僅かに西にずれた場所を南下する。稜線上は笹薮なのでもっと登山道で距離を詰めてから藪に突入した方がいいようだ。

山頂を巻き始める場所。この先で斜面に取り付く ここから割谷山に向かう
樹林+笹の斜面 山頂直下で笹藪に変貌

 登山道が尾根から大きく外れて西に巻き始め、下りが始まったところから登山道を外れて藪に取り付く。この付近は純粋な笹薮ではなく樹林が半分くらい混じっており、笹の密度が低いので真北から登るよりは登りやすそうだ。少し朝露で湿っているがびしょ濡れになるほどではなく、ロングスパッツを装着して突入だ。樹林のおかげで笹の薄い場所が多く、小さな尾根地形で傾斜も緩んで進みやすい。しかし高度を上げると樹林が切れて笹が繁茂すると同時に傾斜も出てきて、密生した笹の上に足を乗せて滑りながら進むようになった。幸い、この笹は強固な根曲竹ではなく両手で掻き分けられる程度であった。背丈は多分腰の高さくらいだが、傾斜がきつい登りなので頭上に覆いかぶさる形になって鬱陶しい。

もうすぐ山頂。 割谷山山頂
割谷山から見た焼岳 割谷山から見た焼岳拡大。噴気が見える
割谷山から見た西穂 割谷山から見たロープウェイ
割谷山から見た笠ヶ岳〜西穂〜霞沢岳〜焼岳(クリックで拡大)
割谷山から見た北ア中央部(クリックで拡大)
割谷山から見た西穂〜明神岳(クリックで拡大)

 傾斜が緩むと笹の高さが急激に低くなり、膝丈程度の森林限界の様相となった。そして傾斜が無くなって最高点に到着、僅かに低くなった北東側に三角点が頭を出していた。山頂付近には人工物は見当たらず、ほとんど訪れる人はいないようだ(当たり前か)。DJFは登っているはずだが何年も前の話で目印を付けたとしてもちぎれて無くなっていて不思議はない。せっかくなので赤テープを残した。ここは展望台のようなピークで眼下に上高地の建物群の屋根が見えていた。六百山から霞沢岳の稜線は目の前だ。

割谷山北斜面 槍見台再び

 少し休んでから出発。北側に下ろうかとも考えたが傾斜がきつくて笹で滑りやすくてコケまくり、途中で進路変更して行きと同様に北西側に下って登山道に出た。

西穂山荘 丸山向けて登る。すぐに森林限界
紅葉せず枯れたダケカンバ 同じく紅葉せず枯れかけたナナカマド

 西穂山荘に戻ってそのまま休憩してもいいが、まだ時間が余っているので丸山まで行ってみることにした。既にガスが上がり始めて展望が限られてしまったが、テントの中で寝ているよりはいいだろう。小屋のすぐ裏から森林限界を超え、立ったハイマツの中に登山道が伸びている。この時間でもまだ登る人、下る人様々だ。最初の肩のような場所はまだ丸山ではなく、その先のなだらかな稜線の先に標柱が立っているピークが見え、そこが丸山に違いない。既に西穂はガスの中で見えない。

丸山山頂 丸山から見た西穂方面
またまた西穂山荘 戻ってきたテント場。最終的にはこの2倍くらいになった

 丸山山頂はダラっとしたピークで、ハイマツが切れて地面が出ており休憩にちょうどいい場所だった。本当ならば正面に笠ヶ岳がデンと聳えているのだろうが雲の中に沈んでしまっていた。休んでいたら眠くなり、横になったら少しの間だが熟睡してしまったようだ。いつの間にか太陽の方向にもガスが上がり日が陰って寒くなって目が覚めた。これを期にテントへと戻った。テント場は2/3程度が埋まっていたがまだ満杯ではなかったが、明日はもっと賑わうだろう。夕方になって晩酌をして寝た。この日は冷え込むかと思いきや、だいぶ気温が高くて最低気温は+3℃程度で、冬用シュラフでは少し暑いくらいだった。テントも霜は降りずに朝露でびっしょりだった。

 翌朝はいよいよ西穂稜線に突入だ。この日は天狗ノ頭を往復したら下山するだけで、労力としては大したことはないはずで少々出発が遅くても問題ない。周囲が充分明るくなって危険地帯でも視界に不安が無くなること、それと標高が高いところで霜が降りたとしても溶けるだろう時刻に西穂に到着するよう5時半に出発した。たぶん早い人はとっくに奥穂向けて出発しているだろう。

再び森林限界を超える 丸山手前。先行者が見える
丸山山頂 丸山付近から見た富士山、南ア
丸山付近から見た八ヶ岳
丸山付近から見た笠ヶ岳の稜線

 丸山を過ぎて西穂独標に向けて本格的な登りが始まればやっと体が温まってダウンジャケットを脱いでTシャツ姿に変身。今日の展望も最高で遠くは白山、南アも光岳までクッキリと見えていた。風もほとんど無く、あとは岩場に霜が付いていなければ最高のコンディションだろう。

丸山が遠ざかっていく 平らな山頂の恵那山
西穂の稜線 焼岳
西穂独標は間違いないが奥のピークは西穂ではないかもしれない
台形のピークが独標 独標直下の登り
白山

 ハイマツの広い稜線の登りが終わって傾斜が緩むと岩っぽい台形のピークが見えた。てっぺんには山頂標識が立っているのが見えるが、たぶんあれが西穂独標だろう。同時に登山道も岩っぽくなるが、西穂独標までは特に危険箇所は無く、一般登山者でも問題なく歩けるような道が続いた。西穂独標直下でガイドにアンザイレンされた男性を追い越したが、おそらく奥穂まで抜けるのだろう。ここならガイドが活躍できるコースか。

 西穂独標からはいくつものピークが重なって見えるが、どれが西穂高岳なのか全く分からなかった。後で調べたらここからではまだ西穂山頂は見えないと分かったのだが、どれも鋭いピークで山頂と言っても納得できてしまう格好だった。さて、まずはそこまでの危険度がどんなものなのか。

西穂独標 西穂独標から見た西穂方面。一番手前のピークがピラミッドピーク
西穂独標の下り始め 短いが垂直に近い下り

 西穂独標は写真だけ撮影して通過、しかし下りのルートが分からない。北側に稜線があるのでそこに下ればいいのだが、いきなりの急降下だ。大きな岩が重なった場所でいまいち下の見通しが良くなく、目印も見当たらない。周囲を見ても真北に下る場所以外はもっと傾斜が急で、ここは適当でもいいから安全そうな場所を自分で判断して下るしかなさそうだ。幸い、周囲は岩だらけなのでホールド、スタンスとも豊富で、足元を確認しながら慎重に下っていく。距離にして僅か数mがそんな分かりにくい区間で、それを過ぎれば再び穏やかな登山道に変わった。本来なら鎖があっても良さそうな箇所だが、ここを通過できないような登山者は西穂に行くなとのサインかもしれない。

北側から見た西穂独標 西穂独標の次の9峰
南アルプス遠望(クリックで拡大)
ピラミッドピークへ登る ピラミッドピーク
7峰 7峰は巻いてしまう。ここで女性3人を追い越す

 この後は主に稜線西側直下を通ることが多く、たまに稜線上を歩くこともあった。道も目印もまだまだ明瞭で明るいうちならルートをミスる心配もなく快調に高度を上げていく。先行する3人の女性パーティーがグングン接近、ピラミッドピークの標識が立つ山頂(正確には肩)でパーティーの後に追いつき、そのすぐ先のピークを鎖がかかったトラバース道で巻く箇所で道を譲ってもらう。私も軽装だがこちらはもっと軽装でまるで日帰り装備のような小さな荷物だった。

あまり危険個所は無い ピラミッドピークと7峰
3峰を巻く 歩いてきた稜線
西穂山頂直下 西穂山頂
西穂山頂から見たジャンダルム 穂山頂から見た槍ヶ岳
穂山頂から見た槍ヶ岳〜焼岳(クリックで拡大)
穂山頂から見た大木場ノ辻〜ジャンダルム(クリックで拡大)
穂山頂から見た大木場ノ辻〜笠ヶ岳(クリックで拡大)
穂山頂から見た笠ヶ岳〜大ノマ岳(クリックで拡大)
穂山頂から見た北ア奥地(クリックで拡大)
穂山頂から見た白山(クリックで拡大)
穂山頂から見た霞沢岳方面(クリックで拡大)
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穂山頂から見た乗鞍岳

 この先も特に危険箇所は無く、ルートどおりに淡々と歩いて小ピーク群を次々と越えていく。雪が付いたら分からないが無雪期は特に緊張する箇所も無く西穂高岳山頂に到着した。とりあえず西穂高岳までなら問題無しだった。山頂には僅かに私より早く到着したヘルメット装着の男女2人組みのみ。装備からして奥穂へ縦走と思ったがそのとおりだった。後からやってきた単独男性も同様、その後のメットを被った単独男性も同じだった。私だけ途中折り返しというのも悔しいが幕営装備を背負っての危険地帯通過の自信がないのでしょうがない。他の人は全員小屋泊まり装備だった。最初の単独男性はほとんど休まずに出発、次の男性がその後に出た。最初の男女は山頂で朝飯の弁当を広げていた。ここまで朝飯無しで登るもの腹が減るだろうなぁ。

お隣のP1へ向かう P1山頂

 西穂山頂でも全く霜は降りておらず、これなら危険地帯が霜で滑りやすくなっている可能性は皆無だろう。場合によっては西穂で時間をつぶそうかと考えていたが、男性2人の後を追って危険地帯に突入する。メットの男性はまだお隣のピークに見えており、その姿でコース取りが窺える。ここの標高は約2900m、そして天狗ノ頭も約2900mなのでほとんど標高差が無いように見えるが、実際は西穂、赤岩岳、間ノ岳、天狗ノ頭の各ピーク間は深く切れ込んでアップダウンが激しい。

P1から見た西穂高岳 P1から見たジャンダルム方面

 西穂から先は道の濃さが不安だったが、実際には見失う可能性は低い程度に良く踏まれ、白いペンキで○が書かれた目印が数多く登場し、目印を見落とさないよう注意して進んでいけば大丈夫であった。この調子で道が続いてくれれば気を抜かなければルートミスの可能性はかなり低いだろう。お隣のピークには「P1」のペイントがあった。振り向くと男女ペアの他に私が追い越してきた3人の女性パーティーとガイドと男性ペアが西穂山頂に見えた。

P1から下り始める 最初の鎖場を下る先行者

 P1からの下りで最初の鎖場が登場、ルンゼを稜線直上から長野側に下る。ここで先行の男性に追いつくが、落石を起こす危険があるので男性が鎖場を通過し終わるまで上で待機した。傾斜は急だが谷のようになって両側に手がかり、足がかりが多数あるので鎖の頼らなくても下れそうだが、ここは安全重視で手の方はホールドと鎖を併用した。スタンスが確保できるので腕力で鎖にぶら下がる必要は皆無だった。

先行者の後を登る 途中で追い越して下を見る
赤岩岳が近いがまだアップダウンがある
鎖場を下る 赤岩岳への尾根。危険個所は無し

 今度は岩稜の登りだが特に危険は無く快調に登る。ここで男性を追い越した。まあ、こっちの方が荷物が少ないので足も速いだろう。このまま赤岩岳の山頂かと思ったらニセピークで、この下りで再び鎖場が登場、ここはさっきよりもホールド、スタンスがたくさんあって鎖のお世話にはならなかった。

赤岩岳山頂 赤岩岳から見たP1と西穂

 赤岩岳の登りは石が積み重なった歩きやすい場所で、淡々と歩いていると赤岩岳山頂に到着、ここは何も標識はなくケルンだけあった。振り返るとP1にはガイドと男性が、西穂には弁当を食い終わったようで立ち上がった男女ペアが見えていた。

赤岩岳からガラ場を下る もうすぐ鞍部

 赤岩岳の下りは崩れた岩が重なったガラガラの斜面で崩れやすそうに見えるのだが、実際は踏んでも動く岩は無く、ルートを外さなければ落石の心配はなさそうだ。間ノ岳との鞍部にはテント1張分のテント場があったが、この時期は水は無いので雪のある時期専用かな。私はこんなところを雪が付いた時期には歩きたくないけど。

間ノ岳の登り。尾根ではなく左側斜面を登る 間ノ岳への登り
赤岩岳を振り返る 間ノ岳山頂

 間ノ岳への登りは稜線直上ではなく岐阜側の浅い谷に目印が続いていた。目印に導かれて淡々と登っていくとあっけなく間ノ岳山頂到着。ここは岩に白ペンキで「間ノ岳」と書かれていた。

間ノ岳からの下り またまた鎖場登場
ジャンダルム方面 間ノ岳を振り返る。えらい険しく見える

 間ノ岳も素通りして先に進む。下っていると私が西穂山頂にいる間に最初に出発した男性の姿が目に入り、すぐに追いついて道を譲ってもらった。さて、もっと先に先行者がいるかな? 天狗ノ頭との最低鞍部に至る前に再び下り場が登場、ここも鎖に頼りきりで下るような場所ではなく、自然地形も大いに利用して下っていく。

間ノ岳−天狗ノ頭間鞍部のテント場 天狗ノ頭側の逆層スラブ。濡れていなければOK
逆層スラブの鎖。使わなくても登れる 鎖の最上部。この辺りは鎖のお世話に

 天狗ノ頭との鞍部に降り立つとテント場が2つ登場、ここから天狗を見上げるとその名のとおりの「逆層スラブ」だ。逆層を言葉で説明するのは難しいが、現場を見れば納得できるに違いない。ネットの記録で写真等で見るとえらい急斜面のように見えるものもあるが、実際にはそんなことはなく、鎖がぶら下がっているが岩が乾いていれば結構フリクションが効いてフリーで快適に登ることができる。最後の狭い谷状の登りだけは鎖があって助かるが、ここも足の置き場を考えれば鎖を使わなくても突破できるかもしれない。

天狗ノ頭直下のガレ場の登り 天狗ノ頭山頂
天狗ノ頭から見た蒲田富士 天狗ノ頭から見た槍ヶ岳
天狗ノ頭から見たジャンダルム〜明神岳

 そこからガラ場を少し登ると立派な山頂標識の立つ天狗ノ頭に到着。ここまで来るとジャンダルムは今まで以上にでかくて近く、GPSの電源を入れて距離を確認すると何と約800mしかないではないか! 予定では今日はここで引き返すことにしていたが現在時刻は未だAM8:30。天狗のコルの標高は約2850mでジャンダルムの標高は3160mくらい、標高差は約300mだから妙な難所が無ければ1時間はかかるまい。たしか天狗のコル手前に垂直の鎖があったと思うが、今までの鎖場と同レベルなら問題無しだ。ロープウェイの最終はPM4時半くらいだったからアクシデントさえ無ければジャンダルム往復の時間は充分にある。こんなに天気もいいし、ここは行くしかないだろう。もうこの時刻では防寒装備の必要は無く、アタックサックに水と食料、ゴアだけ入れてメインザックは天狗ノ頭にデポしてスピードアップを図ることにした。後から来る人はこのザックは何だろう?と思うだろうな。通常、こんな場所でザックをデポして行動する登山者はいないだろう。

東の肩から天狗ノ頭を見る 稜線を外れて北側斜面を下る
コル直前の鎖場 ジャンダルム側から鎖場を見る

 エアリアマップによると天狗の下りで垂直の鎖場があるそうだがどの辺で出てくるだろうか。出だしは岩の稜線で歩きやすく快調に高度を下げる。やがて稜線を離れて岐阜側斜面をジグザグに下っていく。鎖場なんかないなと考えつつ下っていくと、あと少しで天狗のコルという場所で鎖が登場。なるほど、今までの鎖場よりも傾斜がきつく見える。しかし相変わらず鎖の周囲はホールド、スタンスとも豊富で、ほとんどは鎖を使わずに下れた。鎖はほぼ連続した2段構成になっていて、最初の鎖が終わると少しだけ右(南)にずれた場所に次の鎖がぶら下がっていた。こちらはマジで垂直、高さは5,6mといったところでさほど恐怖感はなく、ここもホールド、スタンスとも豊富で、最初に岩を乗り越えてルートを右に移すときだけ鎖に頼ったが、あとは岩を掴みつつ大半の体重は足で支えることが可能で、今までの鎖場より少し難しい所があったが、大幅に難易度が高いわけではなかった。

天狗のコルのテント場 天狗沢。なだらかで気持ちよさそうな開けた谷
ジャンダルム側は稜線北側を登る 天狗ノ頭を振り返る

 天狗のコルに降りると立派な標識が立っており、コルの南側を指して岳沢となっている。天狗沢は予想外に穏やかそうな広い谷で、これなら雪が付いていても大丈夫そうだ。もちろん落石が生じるような場所にも見えない。一般的なルートではないそうだが、樹林が無くて谷の下部までよく見通せるので「有視界飛行」で大丈夫だろう。

目印に従い岩稜を登る 西穂に向かう登山者
再びすれ違い 岩稜が続く
たぶん鎖場はこの1か所だけ ここは南側を巻いたような
振り返る これを越えるとジャンダルムは目前

 コルから先は岐阜側に登山道が続いていた。ここまで来ると奥穂から下ってくる人とすれ違うようになる。岩稜で道が薄い箇所は目印を頼りに進む。コルからジャンダルム間は特筆すべき危険箇所はなく、鎖場が1箇所あるがそれまでの鎖場よりは簡単だ。ただし、岐阜側から稜線に上がってからが少し目印が少なくなるので先まで見ながら歩いた方がいい。稜線上の岩場を歩いたり、傾斜が緩むと南斜面の砂礫地を歩いたりと変化がある。

3130m肩直下 ジャンダルム。西穂側からみるとおだやかな姿

 ジャンダルム手前の3130m肩が近づくと再び岩稜となり、これまた目印が少ないが傾斜が緩くて適当に歩いても大丈夫だった。そして肩に飛び出すとようやくジャンダルムのドーム状が目の前に現れた。写真等では奥穂側から見る「肉食系」の恐ろしい岩峰姿が多いが、意外なことに西穂側から見ると穏やかな「草食系」のピークだ。これなら問題なくてっぺんに登れそうだ。西側の傾斜が緩いのでそちらから登るのが得策だろう。ぱっと見た目ではジャンダルム山頂に至る踏跡は判別できなかった。

ジャンダルム基部の鎖 ジャンダルム山頂に向かう入口の鎖

 ジャンダルム南鞍部から左に巻くように道が付いているが、これはきっとジャンダルムを巻く道だろうと勝手に判断、正面の鎖を登ると右に巻く道とさらに上に登る鎖があり、右を差して非常に読みにくい文字で「オクホ」、上には「ジャン」の文字が岩にペイントされていた。最初に見たのは「ジャン」の方で、最初は意味不明だったが少し考えるとジャンダルムの省略だと分かった。読めなかった「オクホ」は奥穂だったのだ。これでやっとルートが判明、このままジャンダルムの南をトラバースすると奥穂へ、上に登ればジャンダルム山頂だ。あれ? 鞍部から岐阜側に巻くように付いていた道は何だ? ジャンダルムの巻き道は2つあるのかな。ま、とにかくまずはジャンダルム山頂を目指そう。

斜度は適度でどこでも登れそう 途中で踏跡に合流

 短い鎖を登ると目印が続かなくなり、岩稜帯で踏跡も薄くなってルートが分からなくなった。しかし岩は崩れやすくはなく、傾斜もさほどでないので歩きやすい部分を適当につないでグングン登っていく。もちろん落石を起こさないように注意しながらだ。途中で左手から踏跡が合流、下りはここを辿ってどんなルートで登ってくるのか確認するか。

ジャンダルム山頂(最高点 奥穂側) ジャンダルム山頂(ケルン 西穂側)
ジャンダルムから見た槍ヶ岳〜明神岳(クリックで拡大)
ジャンダルムから見た明神岳(クリックで拡大)

 登りきると意外に広い山頂で、ケルンは西穂側、最高点は奥穂側だった。有名ピークにしては山頂標識は無く、今は無人だった。ここまで来ると西穂より奥穂の方が遥かに近く、山頂の人の姿がはっきりと見える。難所である馬の背の所要時間が不明だが、普通に歩けば30分もかかりそうにない距離だ。このまま縦走したいところだが、奥穂は既に山頂を踏んでいるため無理していく必要はないので今回は遠慮しておこう。GPSの電源を入れてロバの耳の位置を確認するとここから約80mしか離れておらず、目の前に見えている岩峰がそうらしい。この距離で行かないのはもったいないのでジャンダルムに続いてロバの耳もオプションに加えることにして、僅かな休憩後に向かった。

ジャンダルム基部南の巻道 奥穂側から巻道を見る

 ジャンダルムの下りは踏跡を辿ったが、西から北西斜面をジグザグに降りて、最後は鞍部から岐阜側に伸びた巻き道に出た。なんだ、これがジャンダルムへのルートだったのか。ここは案内標識が欲しいところだ。ま、ちゃんと事前にネット等で調べればいいのだけど。再びジャンダルム基部の鎖を登り、今度はジャンダルム基部南側を巻くルートに乗る。ここにはそこそこ幅のあるバンドがほぼ水平に走っており、これを利用して反対側の稜線へ出るようだ。落ちればタダではすまない場所だが鎖はなく、バランスを崩してコケないよう岩肌に掴りながらクリアした。僅か1分にも満たない距離だが緊張した。

ロバの耳。北側(左側)直下に登山道が通っている ロバの耳の鎖場

 さて、完全に当初計画外だが最後の目的地、ロバの耳に向かう。DJFのネット記録によればロバの耳は縦走路は山頂を通過していないが、最高点から割と簡単に山頂に出られるとのことで、落石だけ要注意らしい(他に人がいなければ問題ないが)。この点、今日はまだ土曜で一般社会人は今日から入山でこんな時刻にここまでやってこられないため、通過する人は少なく安心できる。ロバの耳は北側に縦走路があり、上部は表面がザラついた1枚岩のような岩に鎖がぶら下がっている。そこそこ傾斜があるが腕力で登るような場所でもなく、鎖は補助程度で足で登ることができた。

登山道最高点から上を目指す ロバの耳山頂から見た奥穂

 最高点からはそのまま直進するように浅い谷状地形があり、傾斜もそこそこ緩やかでよほどのことが無ければ落石の心配はなく、ここも安心して登れた。縦走路から山頂まで数10秒程度の距離しかなかった。

ロバの耳山頂から見たジャンダルム ジャンダルム山頂で休憩する人
ロバの耳から見た槍ヶ岳と後立山(クリックで拡大)

 山頂はさほど広くない岩場であるが数人程度は問題なく休める場所だった。山頂標識でもあるかと思ったが皆無で、やはり通常はここまで足は延ばさないようだ。ここから見るジャンダルムは圧巻で、この方向から登るとホールド、スタンスは多いが垂直の壁をよじ登ることになるだろう。両側も切り立った垂直の壁で、とてもてっぺんに登れるようには見えない。なるほど、難所と言われるわけだ。ところで、ロバの耳やジャンダルムは冬場は巻けるのだろうか、それとも稜線を行くのだろうか? どちらにせよ雪がある時期に来たくない地形だ。残念ながらロバの耳からは馬ノ背の様子は窺えなかった。絶壁の東端まで行けば見えたかもしれないが、そんな勇気はなかった。

 ロバの耳で休んでいると2人組が奥穂側から直接ジャンダルムのてっぺんに登ろうとしているのが見えたので、南から巻いて反対側から登った方が安全だと大声で叫んだ。これはちゃんと伝わって2人はトラバース道を通ってまもなくジャンダルム山頂に姿を現した。そして私がジャンダルムに向けて歩き始めた頃には間ノ岳の下りで追い越した男性がジャンダルムに取り付くところだった。私がジャンダルム基部を巻いて南鞍部に出たときには山頂に達していた。

 奥穂は目の前だが私はここから西穂山荘まで戻ってロープウェイで下山だからまだ半分まで来ただけだ。体力的には西穂までは行きと体力的には大差ないだろうから時間がかかる。西穂に到着すればほぼ下り一辺倒になるので楽ができる。

 さっき歩いたばかりのルートと言うことで油断していたのか、帰りはしょっちゅうルートを外してしまった。ただ、ルート外でも傾斜がさほどでなければ意外と歩けてしまうもので、ルートが稜線を離れるところを見落としてそのまま稜線を下っても少しすると道が合流した。やはり登りよりも下りの方がルートを見失いやすい。

ジャンダルムから天狗のコルに向かう 天狗ノ頭を下って天狗のコルに向かう登山者

 天狗のコルから登りにかかるところで2人パーティーが鎖場を登攀中で、落石の可能性があるので登り終わるまでコルで待った。この鎖場の下段側はコルから見上げると少しオーバーハング気味のように感じられるが、ここを問題なく下れたのだから登りはもっと簡単だった。こちらは荷物は軽いので先行の2名を追い越して天狗ノ頭向けて登っていく。途中、西穂で追い越したガイド&男性パーティーとすれ違う。その後にさらに2名が奥穂に向かっていった。

天狗ノ頭 間ノ岳側から見た天狗ノ頭。下部が逆層スラブ
間ノ岳付近から見た岳沢ヒュッテ 間ノ岳−赤岩岳間鞍部から上高地側の谷

 天狗ノ頭で少し休憩してから出発。下り始めてすぐに、西穂山頂で弁当を広げていた男女2人パーティーが上がってきた。かなりゆっくりのペースだが、穂高岳山荘までなら充分時間はあるだろう。私が西穂山荘に到着するのと同じ頃かな。間ノ岳、赤岩岳と越えていくとさすがに体力的にきつい。今日は天気が良くて気温も高めでかなり暑かった影響もあるだろう。ただ、帰りは2箇所?を除いて鎖場は登りになるため、西穂から奥穂に向かうよりも鎖場は通過しやすかった。

P1から見た西穂山頂 賑わう西穂山頂

 西穂手前のP1では数人の登山者が休憩中。たぶん西穂山頂が混雑しているからだろう。確かに西穂山頂は賑やかで、まだ登山者が登ってくる。今朝のロープウェイで上がってきた人だろう。その後の下りでもたくさんの人とすれ違い、こちらが道を明けることが多かったので疲れた体にはいい休憩になった。

西穂の下りも人が多い 西穂独標も満員状態
西穂独標から下る 丸山

 西穂独標も混雑しており、北側の急斜面の岩場で休んでいる人の姿もあった。ここが一般ハイカーの終着駅で、この先で客層がかなり入れ替わって明らかに山の素人と思える装備の人が増える。まあ、ロープウェイで2100m以上まで登り、西穂独標は2700mちょっとだから素人でもゆっくり登れば充分に日帰りは可能だろう。それにまじめな北アルプスの2700mの山で素人が登れるのは他には思い浮かばない(乗鞍は北アなのかどうか)。人気があって当然か。ただ、既にガスが上がってきてしまい、徐々に展望が失われていったのはこれから登る人にとっては残念だろう。

西穂山荘 帰りのテント場

 小屋に戻るとテント場はまだ空きはあったが新たな住人に入れ替わっていた。朝露で濡れていたテントはほとんど乾いていて、ひっくり返して短時間日に当てるだけで完全に乾かせた。帰りは水は使い切ったし食料もパン1個だけになって荷物は4kg近く軽量化しただろう。少し水は不足気味でよほど小屋で購入しようかとも思ったが、ロープウェイ駅まで下ればいくらでもタダで飲めるので我慢することに。この気温で2日間で3リットルだからかなり少なかったのは間違いない。

 賑わう小屋を後にして下っていくとまだまだ登ってくる人が多い。2171m峰の登りと最後の駅への登りはちときつかったが無事到着。途中の小屋で下山届けを書くのも忘れなかった。週末で人が多いのかロープウェイは五月雨式に運行中で、駅に到着して10分かからずに出発、下りの人数もそこそこ多いが登ってくるゴンドラが満員だったのには驚いた。もう午後3時近いぞ。この時刻では登山者より観光客の数が圧倒的に多かった。

 白樺平で乗り換えて新穂高へ。ここのロープウェイも連続運転状態だったがすれ違ったゴンドラの乗客はゼロだった。そして新穂高へ到着し、旧村営駐車場へとテクテク歩いた。

 

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